田舎暮らしへの道

アラフォー独身女による田舎暮らしへの道

農業体験④

3日目


魔の1日が始まる

面倒見のいい女子大生Kさん、ボラバイト最後の日。


4時半起床、5時にボラバイト受け入れ農家Y家のご主人、おばあちゃん、

Kさん、天然キャラSさん、私の5人で軽トラに乗り合わせ茄子畑へ出発。


この日も暑い中ウィンドブレーカー上下で茄子の収穫作業。きつい。

汗だくになりながら70グラム以上に育った茄子を

チクチクする葉っぱと葉っぱを掻き分けて見つけ出しハサミでカットしていく。

ツヤのいい80グラム前後のものが高値で取引されるそうだ。


日が登ってくるとウィンドブレーカーの中はサウナ状態。

顔には昨日の経験からチクチク対策にマスクをしていた。

頭にもタオルを巻き、手袋もしているので汗が出る部分がおでこ位。

汗が滴り落ち目に入る。

まだ作業にも慣れていないため景色を見る余裕もない。

きっと朝日が綺麗だったろう。


840分収穫終了。寮へ帰宅。

気分的にはあんまり食欲なかったけどこの日位から体的にエネルギーを欲し出してきた。

25分休憩の間にちゃっちゃとしっかり食べる。

塩をかけた白米だけど。


離れの一軒家が私たちボラバイターの寮になっている。

ここは他の農家さんの所と比べて短期間の受け入れもやっているので

前のボラバイターさん達が食べきれなかった

食材やらゴミやら何やら、いつ買ったのかわからないまま残されていた。

正直初めて来たときの感想は

「うわ、汚ねえ」だった。


2 DKキッチン、バス、トイレ、洗濯機共用。

個室と聞いていたけれど実際は襖1枚で2部屋が仕切られているだけ。

そこに初対面の3人女性が共同生活をする。修行だ。

幸い今回出会った方々は皆人当たりよく

ボラバイト経験ある人たちばかりだったので

いろんなボラバイトの話を聞かせてくれたり、

気がついた人がお米を率先して炊いてくれたり、

掃除してくれたり、お風呂譲り合ったり、

とても協力的で快適に過ごすことができた。

ラッキーだったと思う。

こういう環境ではなおさらコミュニケーションとることが

とても大きな意味をなすと実感した。


ちょっと天然キャラで不思議ちゃんかなと言う

第一印象を持ったSさん。

自分の要望をふわふわした喋り方なのにはっきり言うことがあり

ちょっといらっとすることもあった。しかし

「仕事に集中すると周りのこと見えなくなっちゃうんです、ごめんなさい!」

と言いながら泣き出しそうになった時は思わず笑ってしまった。

そして(あ、わかってはいるのね)と思ったら怒りはおさまり

その告白以降いらっとすることがなくなった。

だから自分の状況を正直に相手に伝えることって

大事なのだなと思った。

それをきっかけに私も身の上話をたくさんした。


この日が最後のKさんと入れ替わりで新しい人が1人寮に来た。

定住せずボラバイトを渡り歩き生活していると言う(!)

20代のOさん。

彼女は初っ端から

「空気読めないって言われるのでそういう時言ってください!」

と日焼けした爽やかな笑顔で言ってきた。

とても清々しい印象を受けた。

協力しなければならない場面に於いてまず

歩み寄りと相互理解から物事がスムーズに回りだす。

しかしこの腹を割りあえるようになったきっかけは

茄子の箱詰め作業で追い込まれたからなのだった


Kさんが茄子の箱詰め作業途中で帰宅。

急にKさんが抜けたから作業が滞り出した。

Aランクの茄子とBランクの茄子を箱詰めする作業をKさんがずっと担当していた。

説明受けてない私がそこをやるしかない。

しかし私はまだ慣れておらず頼るのはSさんのみ。

だっておばあちゃんはひたすら茄子を仕分けしていて

聞ける雰囲気じゃないのだ。

それでも仕事だからおばあちゃんに質問すると

M(サイズ)」「大(の箱)」

とか一言しか返ってこない。

茄子の詰めかたもサイズによって違うので、どう詰めたらいいのか、

何本詰めたらいいのか必死に察しようにも

なにしろ初めてここに立っている私は理解できなくてミスしてしまった。

するとみるみるおばあちゃんの機嫌が悪くなってくる

イライラしているのが手に取るようにわかる。

私が女性の職場が苦手なのは感情によって

仕事が非効率的になるこんな画面によく出くわすから。

(あくまで私の人生上の統計です)


言葉足らずだったり説明してくれなかったりするくせにできないと起こる。

聞いても怒ってるし、怒ってるからこっちはさらに聞けなくなる。

萎縮するばかりである。

仕事が終わるのが遅くなって自分の首をしめていると言うことに

どうやら気づいてない。

そういう場面に出くわすたびに反面教師にしてきた。

新しい人が入ってきたらちゃんと教えてあげよう。私はさらに強くそう思った。


この日は9時から15時までノンストップの箱詰め作業となった。

私たちが慣れてないことに加えおばあちゃんの不機嫌、

暑さ、茄子の収穫量の多さで私は後半意識もうろう。

頭が痛くなった。

そんな中でおばあちゃん、言葉でも怒りぶちまけまくりだしついにSさんがキレた。

「教えてもらってないんです!!」

アニメ声で必死に反論するSさんを

頭痛でぼーっとしながら眺めつつ

私はまた農家のご主人の軽トラで出荷場へ荷下ろし手伝いに同伴。

Sさん自体もあまり教えてもらっていないのに加え、

私が理不尽におばあちゃんに怒られていることも含めて

Sさんは反論してくれたと感じたので、私は私でご主人に訴えた。

「今日初めてやることも多く言葉少ないおばあちゃんの説明を察しきれずミスしてしまいました」

と言うとご主人は

「あー前から言ってるんだけどね。ちゃんとこれを箱にこうやって詰めてっていうところまで言わなきゃわかんないよって。言い方1つで仕事って変わるって。でも治らないんだよ〜」

と言われた。ここでも理解してもらえたことで多少スッと落ち着いた。

話によるとおばあちゃんは職人の家系出身なのだそうで。

見て覚えろ!みたいな厳しい世界で育ってきた方らしい。

ご主人は一般企業でも働いたことがあるとのことで、

言い方1つで状況が変わることをわかっている。

わかってはいるのだろうが


荷下ろしから帰ってきてすぐ、今度は桃の収穫の手伝いに行くことになった。

桃の木のある場所までおばあちゃん運転の軽トラに乗ることに。

軽トラ内でも桃の作業中も終始おばあちゃん無言。

桃の木の下で作業する際も桃の葉っぱを投げつけたりしている。

明らかに機嫌が悪く、私もストレスだった。早く帰りたくなった。


寮に戻ったのが18時半。これでこの日の作業終了。

寮の米が少なくなっていることに気づいた。

米と野菜は支給してもらえる約束だったので

米が欲しい旨を伝えにご主人を探し敷地内の作業場へ戻ると

なんとご主人とおばあちゃんが取っ組み合いの喧嘩をしていた。

「お米が!お米がないのですが!!」

わざと割って入って大声で言った。

するとご主人が

「くそばばあ!!!」

とおばあちゃんに吐き捨てておばあちゃんを突き放した。

私は何事もなかったかのようにお米の話を続けたが、

どえらいもん見てしまったと思った。


つづく…